設立の経緯と趣旨
光学技術は、カメラやディスプレー等の映像機器や通信といった日本の主要産業を支える重要な基盤技術のひとつであるにも関わらず、日本では光学技術に関する体系的な教育が行われなくなっています。こうした現状に対し、キヤノン株式会社から宇都宮大学に日本の光学技術教育再構築の働きかけがあり、宇都宮大学もまたその趣旨に大いに共鳴し、両者が協力した光学技術に関する教育研究組織の設立を決意しました。このセンターは、将来、日本の光技術産業を担う技術者の育成と先端光学技術の創生に、産業界と連携して取り組むセンターです。 具体的には、キヤノン株式会社は資金面での支援のほか、社員が光学技術教育の講師を務め、教育面でも両者が協力して取り組むことになっています。一方、宇都宮大学は、センター憲章に従ってセンターを継続的に強化し、本センターが光学技術分野で世界有数の教育研究拠点になることを目指します。
センター長 大谷幸利 挨拶
初代センター長 谷田貝豊彦 挨拶
オプティクス(光学)とは、光に関する学問です。光は、太古から人間の生活とはきっても切れない関係にありました。地球上のあらゆる生命の維持には太陽の光は不可欠です。光とは一体何であるのでしょうか。どの様に光のエネルギーが誕生して、どの様に光が情報を運ぶのでしょうか。光に関する疑問は増すばかりです。かつて、「オプティクスは科学の母である。」と言われた理由もここにあるのです。20世紀の扉が開くと同時に、近代物理学が誕生しました。光の量子説、量子力学の誕生、原子の構造の解明など、今でもわれわれをわくわくさせる大発見が続きました。そして、20世紀の半ば過ぎに、レーザーが発明され、ついに「光の時代」が到来したのです。
21世紀の現在では、光技術はわれわれの生活には無くてはならないものに成っています。カメラや顕微鏡、望遠鏡などの光学機器はもとより、音楽や映画を楽しむためのCDやDVDは、光技術が無くては生まれません。情報通信を支えているのも光技術です。また、半導体集積回路(IC)やLEDや半導体レーザー(LD)を製造するのにも光技術は必須です。部屋の照明や野菜の栽培にも光技術は活躍しています。さらに、最先端の学問分野でも、オプティクスは主役です。生命現象の解明にはタンパク質などの分子の状態を精密に観測することが必要ですが、このためにはレーザーを使った分光技術が活躍しています。また、非常に短い時間(フェムト秒)に起こる現象の解明にも光は使われています。
さて、このような非常に重要な分野において、教育や研究を行う組織が必要であることは明らかです。残念ながら、わが国にはそのような組織はありませんでした。光の教育・研究は、大学の様々な学部、研究機関、そして多くの企業で個別に行われてきました。多くの組織が、時に競争し、時に協力しながら研究を進め、技術を向上させてきたのです。現在の日本の光学企業の研究開発レベルや国際競争力を見ると、この分散戦略が成功しているように思えます。光学は空気のように存在し、特に体系的なアプローチで行われなくても素晴らしい進歩があるのかもしれません。
しかし我が国は今、生活のグローバル化、少子化、研究開発競争の加速など、厳しい環境に置かれています。光技術を取り巻く環境もまた同様です。そこで、宇都宮大学では、"CORE(Center for Optical Research and Education)"を設立しました。宇都宮大学オプティクス教育研究センター(CORE)は、光技術および光産業のさらなる発展に寄与するため、産学官連携で光科学技術分野の教育・研究を推進します。宇都宮大学オプティクス教育研究センターは、「光の世紀」のために全力を尽くし、21世紀の科学技術の母体となる光学を守り続けるために、これからも努力を続けていきます。